スウィング・ジャズの元祖とも言えるグレン・ミラーには「ムーンライト・セレナーデ」の代表作を始め、無数のヒット曲があるが、この曲「イン・ザ・ムード」もその中の一つ。考えようによっては、分散和音のエチュードみたいな、サックスの単純極まりない主旋律が、グレン・ミラーによって、世界的なヒット曲となった訳だから、これはもうグレン・ミラーの才能に脱帽するのみ。ここではトロンボーン、アルトサックス、ヴィブラフォーン、ミュート・トランペットの各アドリブ、その他のテュッティ演奏、及びオリジナルのエンディングを採用した編曲がなされている。
1939年にグレン・ミラー楽団が発表した人気曲。作曲はサクソフォン奏者で作編曲者のジョー・ガーランド。もともとはアーティー・ショー楽団が演奏していた曲だが、グレン・ミラーがさらに軽快に演奏したことで大ヒットとなった。主要モチーフの一部が別人の先行曲からとられていたため、訴訟になりかけ、グレン・ミラー側から和解金が支払われたことがある。先述の映画『グレン・ミラー物語』では、ドイツ軍の空襲下、ロンドンの野外で演奏されていた。
木管群の奏するテーマが分散和音でできているような曲で、タンキング(舌使い)とフィンガリング(指使い)を一致させるのがなかなか難しい。よく中高吹奏楽部が楽しそうに演奏しているが、まず、まともな演奏に出会ったことがない。それほどの高技術を要する曲である。(富樫鉄火、「Standard Pops」ライナーノーツより)