管樂版樂譜由瀨尾宗利編曲,現已絕版,2016年由Rocket Music再販。這首傑作,作為比賽和音樂會的名曲經常被演奏。【秋山紀夫】
アーノルドが音楽を担当した映画「第六の幸福をもたらす宿」は、イギリスのアラン・パージェス原作の小説「小柄な婦人」にもとづいて、1958年、アメリカの20世紀フォックスによって、マーク・ロブソンを監督に起用して、イギリスで制作されました。映画の原タイトルは「The Inn of the Sixth Happiness」で、ここでは「第六の幸福をもたらす宿」と訳されていますが、1959 年春に日本で封切られたときのタイトルは「第六の幸福」でした。映画のあらすじは次のようなものです。
イギリスのリヴァプールで、メイドをしていたグラディス・アイルワード(映画では、スウェーデン生まれで知的な女優として当時人気のイングリッド・バーグマンが演じた)は、熱心なクリスチャンで、中国ヘ渡って伝道活動をしたいとロンドンにやってきます。そして、中国伝道協会を訪ねますが、無資格のため断られてしまいます。しかし、ロンドンでメイドをして旅費を貯め、ひとりで中国奥地の山村、ワンシエン(王城、架空の村)にたどり着き、そこに住む女伝道師ロウソンの下で働きます。ロウソンは「第六の幸福をもたらす宿」を経営し、ロバを追う旅人を泊めて伝道資金を稼ごうとしていました。中国では5つの幸せという教えがあって、それらは富、長寿、健康、徳と、老齢になってやすらかに死ぬこと(孔子編「書経」による)なので、第六の幸せは自分で探すもの、つまりロウソンは、キリスト教を広めることが「第六番目の幸福」という意味で、宿の名前としました。
アイルワードは努力しますが、なかなか風土に溶けこめません。しかしロウソンが事故死して、自分ひとりで切り盛りせねばならなくなりました。ドイツ人と中国の混血の軍人リン・ナンが政府の使いとして村にきて、村長に纏足(てんそく)の禁止を伝えますが、うまくいきません。アイルワードは村長を助けて、禁止を実行させ、また囚人の暴動を鎮めたりして、次第に村人から信用、尊敬されるようになっていきます。しかし、リン・ナンが日本軍の侵攻が近いことを知らせ、村長はキリスト教に改宗して村人とともに去っていきます。村に留まる彼女の下に100人ほどの孤児たちが集まり、彼女はこの子たちを安全な西安の町まで、山道をたどって送り届けねばならなくなります。飢えと疲れで何度も危険な自に遭いますが、ロープを頼りに谷川を泳いで、渡り、寒さに震える子どもたちにイギリスの童謡「ジス・オールドマン・テルズ・アス・オール・イズ・ウェル」(This old man tells us all is well、お爺さんが「すべてうまくいく」と言った)を歌って励まします。やっとたどりついた西安で、彼女はその努力が伝道団に認められます。大任を果たしたアイルワードはリン・ナンと合流して村を再建するため戻っていきます。
このように、戦争中のイギリス女性のヒューマニズムを描いた映画で、イギリスの田舎に野外セットをつくって撮影されたもので、当然音楽は、その前年「戦場にかける橋」で大ヒットしたマルコム・アーノルドが起用されたのです。アーノルド自身は「戦場にかける橋」の演奏会用管弦楽版をつくらず、彼の70歳記念にBBC放送が、弟子のクリストファー・パルマーにその編曲を依頼したのと同様に、この「第六の幸福をもたらす宿」の演奏会用管弦楽版もパルマーによって編曲され、1992年にイギリスのフェルドマンから出版されました。
曲は次の3つの楽章で構成されています。
第1楽章:ロンドン・プレリュード【3分36秒】
第2楽章:ロマンティックな間奏曲【3分43秒】
第3楽章:ハッピー・エンディング【5分36秒】
吹奏楽版の楽譜は瀬尾宗利編曲でオクト社から2001年に出版され絶版になってしまいましたが、2016年にロケットミュージックより再販されることになりました。今ではコンクール、コンサートの定番曲としてあちらこちらで演奏されている名曲です。【秋山紀夫】