歌劇「ポーギーとベス」は、アメリカを代表する作曲家、ジョージ・ガーシュウィン(1898〜1937)が、デュボーズ・ヘイワード(1885〜1940)の小説「ポーギー」を原作として手掛け、1935年に初演された3幕9場からなるオペラです。1920年代のチャールストン(サウス・カロライナ州)の鯰長屋(キャットフィッシュ・ロー)に住む貧しいアフリカ系アメリカ人の生活を描いています。ジャズや黒人音楽のイディオムを用いて作曲されており、ミュージカルの先駆的な存在といわれています。ガーシュウィンは、実際の黒人たちの歌声を聴くために、何度かチャールストンを訪れ、この地方の黒人霊歌や、ニグロ・ミンストレルや、物売りの呼び声(イチゴ売りやカニ売りなど)を現地調査しています。
【アレンジャーより】
調性については、曲間のスムーズな移行のため、[Introduction]は原曲の半音下、[Summertime]は半音上、[Bess, You Is My Woman Now]が半音下、その他は原調でアレンジされています。[Bess, You Is My Woman Now]からオペラ終結部に移行する構成ですが、そのオペラ終結部は原曲より半音高くなっています。
テンポについては、[Introduction]が原曲では四分音符が112の指示ですが、より速いテンポで演奏するのが一般的なようですので、120としました。[Summertime]については、テンポ表示にとらわれず、自由なアゴーギクで表情豊かに演奏してください。ソロはFlugelhornを指定しましたが、トランペットで演奏しても構いません。Bess, You Is My Woman Now]についても同様に、自由なテンポ変化を付けて表情豊かに演奏すると良いでしょう。
[It Ain’t Necessarily So]については、原曲ではドラムセットの使用や、アドリブを含んだコール・アンド・レスポンスが行われるなど、かなりジャズ的な要素が強い曲で、実際のオペラでも自由に表情と雰囲気を付加して演奏されることが多い場面です。Ride CymbalとBass Drumには、with jazz feelingという指示を付けましたので、ジャズのドラムセットのプレイをイメージして演奏してください。特に、大口径のConcert Bass Drumを使用する場合は、ミュートや打点を工夫するなど、グルーヴが重くならないように気を付けてください。
打楽器は、ティンパニを含め最大4名で演奏可能としています。人数に余裕がある場合は、鍵盤打楽器を分けると良いでしょう。また、その場合、最終小節1拍目のCymbalsにBass Drumを付加したいところです。