夜明け前、港はとても静かです。岸壁にゆっくりと打ちつける波の音と、時折聞こえる海鳥の鳴き声が、高音と低音の対比をなしているようです。やがて、周囲がじっと明るくなり、水平線の向こうから光が見えるやいなや、一気に日の出を迎えます。日が昇ってからは、港は賑やかになります。港湾作業員や釣り人の物音、沿岸の工場の作業音など、様々な音が聞こえてきます。日の出前に比べると、海の様子も少し活発に見えます。お昼ごろになり、満潮が近くなると、沖の方から回遊魚の群れが勢い良く泳いできます。太陽の光が魚の鱗にピカピカと反射してとても綺麗です。水しぶきをあげて様々な方向に群れは進みます。夕暮れ時、潮が再び引いて、辺りも暗くなってきた頃、今度は海をかき分けて、大型客船が入港します。客室の無数の明かり、港をゆるがす大きな汽笛、そしてなにより圧倒的なスケールの船の存在感は、港の景色を全く別のものにしてしまいます。船が係留され、乗降も落ち着いた頃、あたりはすっかり暗くなり、再び静かな光景が戻ってきます。(三浦秀秋)