ドイツの文豪ゲーテ(1749-1832)の戯曲「エグモント」は、オランダ独立史に登場する実在の軍人エグモント伯をモデルとした悲劇で、1788年に刊行されています。この物語の上演にあたって、1809年の暮れにウィーンの宮廷劇場から付随音楽、いわゆる劇伴の委嘱を受けたのがかのベートーヴェンでした。ベートーヴェンは物語に必要な10曲の付随音楽を書き上げましたが、現在はこれら全てが演奏される機会はあまりなく、この序曲だけがプログラムに採り上げられることがほとんどです。ベートーヴェンは幼少の頃からゲーテの作品に親しみ、ゲーテを尊敬していましたので、作曲にあたっては非常に意欲をもって取り組んだといわれており、作品はゲーテに献呈されています。1812年にはゲーテとの会見が実現するなど、直接的な交流が二者の間にありました。